丸山の講義補助

Contents for Higher Education for Sustainable Development

(第11章)しなやかな(弾性のある・レジリエントな)街づくり

業界あるあるですが、「resilient」を「強靭な」と和訳する場面も少なくありません。教科書第11章のタイトル「Resilient Cities」は、「強靭な街づくり」と和訳できるのかもしれません。

私は、その和訳に基本的に賛同していません。これはスリランカでのフィールドワークで痛感したためです。東北地方を襲った巨大津波の後に残された「奇跡の一本松」は、確かにまっすぐで、よくぞ耐えた!と感動します。でも純粋に「他の松は流されちゃったのか。その分、1本の松は長生きしなきゃね。。。あれ、人工的に再生ですか。。。え、観光地化ですか。。。」となると、微妙な感じがします。なによりも、「大きな津波にも耐える強さを育てるのだ!」と教育関係者は「resilience」を捉えがちです。スリランカについてレポートする前に、現地調査した時、海風によって曲がったヤシの木が並んでいる様子をみて、「津波が来たら、その威力にさらわれながらも、受け流した」と。受け流すことができたからこそ、奇跡的に1本だけ生き残るのではなく、数多くのヤシの木が残った。なので、私は「しなやか」という和語を当てたいです。

ここで、「resilient」を辞書で調べてみると:

Cambridge Dictionaryでは、

  • able to be happy, successful, etc. again after something difficult or bad has happened: She's a resilient girl - she won't be unhappy for long.
    Optimists argue that the economy may prove more resilient.

  • able to quickly return to its usual shape after being bent, stretched, or pressed: This rubber ball is very resilient and immediately springs back into shape.

Websterでは、

  • capable of withstanding shock without permanent deformation or rupture
  • tending to recover from or adjust easily to misfortune or change

Oxfordでは、

  • (of a person or animal) able to withstand or recover quickly from difficult conditions. ‘babies are generally far more resilient than new parents realize’; ‘the fish are resilient to most infections’
  • (of a substance or object) able to recoil or spring back into shape after bending, stretching, or being compressed. ‘a shoe with resilient cushioning’

とのことで、理性的に考えると「強靭な」は妥当な和訳です。ただ、強靭なシステムづくりをしても「想定外に対応できない・想定外だったので仕方ない」のがオチになるのでは?という危惧が残ります。同じようなことが、原発事故の解説(言い訳)で繰り返されたため、私としては、自然災害は完全に防げないので、減災アプローチが良いのではないか?と思いました。

では、教科書第11章では「しなやかな街づくり」が、どのように示されているのでしょうか。

I. The Patterns of Urbanization Around the World

まず、10個の都市に関する特徴が並べられています。1.都市とは高い人口密度を持つ、、、3. 都市とはその国の生産性を持つ場所である、、、4.都市とは革新が発生する場所、、、8.都市とはしばしば格差が目立つ場所、、、10.都市は、人と経済活動の集中による「都市の外部性(urban externalities)」課題に直面している。この「外部性」について、私はほぼ無知なのでこういう論文に目を通してもポイントがズレてるのですが、東京だと人が多すぎて生活の質が低くなるなどリスクが存在することが挙げられます。

そして、UN Population Division の予測によると、2030年までに世界人口の60%が都市部で生活するようになるだろうと(United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (DESA Population Division). 2012. “World Urbanization Prospects: The 2011 Revision. p.3)。

www.unfpa.org

II. What Makes a City Sustainable, Green, and Resilient?

多くが都市部に住むのであれば、都市を持続可能にすることを考える必要があります。そのためには、SDの3側面、すなわち都市も経済的に生産性を保ち、社会的・政治的に包摂する、そして環境面でも持続可能性を担保することが答えになります。

  • Urban productivity: 都市とは、個人が正当かつ生産的な仕事を見つけ、効率的なビジネスが存在する場所であるべき。その基本は、生産的なインフラ。
  • Social inclusion: 都市とは、高い社会移動を生み出す、または貧富の差を拡大させる場所であるから、異なる人同士が混在できる場所にすべき。
  • Environmental sustainability: 人口密集ゆえ感染症や災害被害のリスクが高い場所。なので、「エコロジカル・フットプリント」を小さくすること、温室ガス輩出を縮小すること、環境に適合させる努力をすべき。

私が10年近く追いかけている「バルト海」プロジェクトでは、『Urban Ecology』という小学校から高校教師向けの学習(させる)ガイドを誰もが使えるように用意しています。

www.b-s-p.org

III. Smart Infrastructure

  • 地下鉄網の整備
  • 水の供給を効率化
  • 廃棄物の管理

ちなみに、私は子どもの頃から「シムシティ」が大好きで、実は4年ほどiPadでプレーし続けています。もっとも、ひたすらのんびりと都市を育ててるので、お見せできるようなものではありませんが。Palm OSでのSimCityも持ってます(笑)

IV. Urban Resilience

  • 隣国の都市部では、大気汚染のため太陽を拝むことができない。
  • 地震活動も盛ん。様々な整備と努力。
  • 海水面も上昇中。オランダやツバルが沈む。

V. Planning Sustainable Development

  • Sustainable cities are green and resilient. They are green in the sense that they have a low ecological impact, low GHG emissions per capita, and a pleasant and healthful environment for people to live and work in, including safe and clean air, accessible parks, and ways for people to remain active and healthy through walking...Sustainable cities are resilient because they recognize and plan ahead for the shocks they may experience in the future (p.387).

特に、みなさんは東京という大都会に暮らしていて、その課題を多く感じているはずです。講義では、そうした課題を共有していきましょう。