比較教育(地域研究):先進国から途上国まで
先週末、日本比較教育学会 第55回大会 / 日本比較教育学会が開催されました。 全国から約300人の比較教育学者が申込み、様々な研究テーマに沿って部会が開かれました。その直前には、私の手元に『比較教育学原論』が到着。
さて、国際協力と教育というと、「途上国で困っている、教育機会が無い子どもたちのために何とかしよう!」と思われがちで、もちろん大切ですが、先進国同士も国際協力して国内の教育を改善しようと努力しています。2000年から大いに注目されるようになったOECD-PISAの結果により「良い教育がなされている」の代名詞となったは、フィンランドです。
私自身は、PISA実施部隊として2002年から2015年まで関係してました。印象的だったのは、2点です。1)OECD加盟国の大学院生たちがPISA会議の時に集まり(各国代表が連れてきてた)、データ交換や分析モデル構築のために意見交換・飲み会をしてた。日本人ゼロだったので、羨ましい&焦燥感を持ちましました。2)PISA結果を誰もが重視するのは、東アジアと東南アジアおよび新興国であって、欧米・豪州・NZとも「国際平均またはそれより良い結果だ。教員の皆さん、今までどおりがんばって」というスタンス。日本では、やれ学力低下、やる気が無い、ゆとり世代、学力回復などとセンセーショナルに。「何のための、能力・学力なのか?」と、そこらへんは、岩波で書かせていただきました。
グローバル時代の市民形成 (岩波講座 教育 変革への展望 第7巻)
- 作者: 佐藤学,秋田喜代美,志水宏吉,小玉重夫,北村友人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/10/29
- メディア: 単行本
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他の国々も見てまいりましょう。
- ドイツ:PISA ショック、授業改善、移民対応、改善と州間格差、EU で一人勝ち
- フランス:学力伸びない、二極化と社会の不安定化、共和制(出自でなく、社会経済背景)
- イギリス:市場化、教育改革、格差拡大と公共サービスの縮小
- 米国:国の主導強化(法整備、財政)、地方分権制の維持、多様な学習権保障(自宅学習)
- 豪州、NZ、カナダ:国際平均より高い「学力」、先住民の社会的包摂、新たな移民と保守層
- エストニア:知識経済へのシフト、大国に囲まれた人口減少社会の危機感
エストニアには、私も10回ほど行って、目覚ましい努力を行っていると思います。その動機には「2050年にはエストニアという国が無くなる」という危機感が背景にあると私は分析してますが、政府はICTを全面に打ち出しています。2019年もエストニアへのスタディツアーを行い、現地調査を学生とともに行う予定です。冬に行ったツアーはこんな感じです↓。
学生が作るインスタはこちら:
- タイ:国内格差が指摘される。
また更新します。