丸山の講義補助

Contents for Higher Education for Sustainable Development

Entries from 2019-01-01 to 1 year

システム思考から考える教育と解決−3

グループ発表に向けて まずグループ発表に必要なポイントを確認しておきましょう。 「SD」の定義はできてますか? トピックは、その定義にふさわしいものですか?また、自分たちがやりたいこと・解決したいことに直結してますか?(でないと、レポートも苦痛…

システム思考から考える教育と解決−2

循環的因果関係 先週は因果関係を探りました。正解や不正解という捉え方ではなく、自分はどう思うのか?という点が重要だということも共有しました。今の段階でグループで因果関係の図が共有されている状態のはずです。 宿題では、フィードバック構造につい…

システム思考から考える教育と解決−1

循環的因果関係に向けて 「持続可能な開発」 や「持続可能性」には、循環的な捉え方がとても重要です。今回はその前に、システム思考について再確認です。次回で循環的因果関係を扱います。教材4のイントロ章では「良心だけではダメ」とされ、第4章ではシス…

リテラシー、ノンフォーマル教育(国際教育開発論2)

リテラシー literacy(識字)の一般的な定義は、「読み書き算ができること(日常生活における簡単な文章を読むことができ、理解でき、簡単な計算ができること)」を指す。これを「基礎的識字(basic literacy)」と呼ぶこともある。 「機能的識字(functiona…

ESDとインクルーシブアプローチ (国際教育開発論2)

社会的包摂の3側面 前回は、教育アクセスから教育の質へ移行する話でした。EFAの時代、教育アクセスは最重要課題とされ、近代学校へ通学することが「教育」を実際には意味する場面もありました。SDGsが始まるとEFAの内容が拡張され、中等教育段階への拡がり…

EFA から SDGs へ (国際教育開発論2)

秋学期始まりました!教材3『Learning First(学習ファースト・学習ありき)』 は、次リンクからダウンロード可能です。まずは、サマリー、セクション1、2を読みましょう。 サマリーでは、国際目標の存在とその影響、学習の意義が変わってきてる、5つも研究…

夏休み、しばらく音信不通に

世界教育学会(WERA)国際大会(Focal Meeting)が、東京大学と学習院大学で開催されます。どこの国で開催されても同様に現地の教育学会大会と共同開催という形です。日本の場合は、日本教育学会(JERA)第78回大会と同時に開催され、WERAかJERAかに申し込む…

システム思考で捉えると、世界が面白く見えてくる!

「途上国の人たちがかわいそうだから、助けたい」という純粋な気持ちはとても大切にしてほしいです。でも、そういう気持ちを(無意識でも)悪用する人も世の中にはいて、私たちが関わるほどに、「かわいそうな」人たちを閉じ込める・追い詰めることもありま…

(第12章)気候変動

教科書12章は、気候変動です。多くの国々では気候変動がホットな話題で、先日のオーストラリア選挙では気候変動が争点の一つでしたし、 NASAも気候変動の問題提起をしています。大阪で開催中のG20サミットでも、気候変動は扱われていますね。 climate.nasa.g…

(第14章)MDGsとSDGs(暫定版)

I. SDGs SD課題の中で最も緊急性の高い課題は、2000年にMDGsが採択された際に世界が取り組んだ課題「極度の貧困との闘い」である。極度の貧困は、少なくとも10億人の人々の生死に関わる問題であるため、最も緊急の優先課題。 SDSNは、世界が必要とする新しい…

(第13章)生物多様性と生態系サービスの保護

I. 生物多様性とは Ecosystem services (生態系サービス) affect human wellbeing: 供給サービス:水や食料、木材など建造物や衣服、燃料などが、生態系から得られる 調整サービス:通常の気候、感染症拡大、水・窒素・ 酸素などの養分循環を調整する 基盤サ…

(第10章)食の安全

I. Sustainable Food Supply and the End of Hunger 世界的な人口増加により、想定よりも食糧問題は大きく、複雑になっている。その理由として、4つ。 A significant share of the world population today is malnourished. The global population continues…

(第9章)万人のための健康

I. Universal Heal Coverage, & II. Poverty and Disease SDの大前提には、健康であることが挙げられます。個人がどんなに能力が高くても、健康でないとその力を発揮できません。1948年の世界人権宣言でも、健康とウェルビーイングは人権かつ基本的ニーズだ…

(第11章)しなやかな(弾性のある・レジリエントな)街づくり

業界あるあるですが、「resilient」を「強靭な」と和訳する場面も少なくありません。教科書第11章のタイトル「Resilient Cities」は、「強靭な街づくり」と和訳できるのかもしれません。 私は、その和訳に基本的に賛同していません。これはスリランカでのフ…

比較教育(地域研究):先進国から途上国まで

先週末、日本比較教育学会 第55回大会 / 日本比較教育学会が開催されました。 全国から約300人の比較教育学者が申込み、様々な研究テーマに沿って部会が開かれました。その直前には、私の手元に『比較教育学原論』が到着。 さすが、京都大学大学院教育学研究…

(第8章)教育・人間開発、就学前教育で勝負あり?・・・生涯学習と社会上昇、大学の役割

教科書第8章のタイトルは「Education for All」なのですが、1990年から2015年までに世界的に展開されたEducation for All: EFA(万人のための教育)キャンペーンはあまり扱われていません。著者が経済学者であることが主たる理由ですが、上智大学FGSでの私の…

(第7章)社会的包摂

ほとんどの国は、3つのSD目標(経済開発、社会的包摂、環境保全)を達成できていない。経済的に豊かな国であっても、収入・裕福・パワーなどの格差があり、民族・宗教・人種・性差・出身などによる差別を抱えている。 社会的包摂の3つの側面 The first dimen…

(第5章)貧困の終焉

教科書第5章では、貧困を終焉させることができると、各分野の改善傾向と技術革新による可能性が示されている A widely used definition of extreme poverty is the World Bank's poverty line, where extreme poverty lies at or below an income of $1.25 p…

(第4章)やはり女子教育は大事:発展した国、貧困状態のままの国(簡略版)

教科書第4章から。貧困チェックリスト。すべての国に該当するわけではない。 Poverty traps Bad economic policies Financial insolvency Physical geography Poor governance Cultural barriers Geopolitics 貧困の罠(poverty traps)から脱出する2つの方…

#セレンディピティ 、教育でそれを高める?

「あの人は、運がいいよね」と思うことがありますか?スピリチュアル系の話では、よくあるんでしょうけど、「セレンディピティ」、つまり「偶然なにか素敵なことに遭遇したり、想定外のことを見つけたり、偶然を機会にして喜びごとをものにできる能力」につ…

(第3章)自らの技術革新で成長するか、借り物をコピー改善か

今回は、経済発展を中心とした教科書第3章です。でも講義では、前回扱った内容である各種格差と教育の関係と、経済資本・社会関係資本・文化資本の話を改めて確認しておきます。その上で、技術革新について中心的に扱います。テクノロジーの観点は、SDの論点…

エキサイティングな #StudyTour(メコン経済回廊 & 北部タイ)

上智大学では、いくつものスタディツアーの機会が提供されています。例えば、北部タイとメコン域における国際教育協力・架け橋のために、スタディツアーが開催されています。オススメは、短期・長期の海外留学は大学2年か3年で行くこと、その前の1年生、2年…

子どもの日:楽しいこと・面白いことと学習を接続させたい

研究室の本棚を整理してると古い資料が。研究所に勤めていた時、外部の人への一言メッセージで、こんなことを書いていました。 自己だけでなく、周辺あるいは遠くの他者、さらには人工物や自然環境をケアする概念をもとにした幸福の追求を教育の目的とし、国…

私教育と公教育:価値形成と国民形成から、天皇の教育と体現

教育を学校教育だけと捉えている人がいるとしたら、今こうしてネット上の情報にアクセスして何かを学んでいることに、もっと気づいた方が良いでしょう。私たちは、ゆりかごから墓場まで、つまり生涯にわたり学び続けていますから。少し、そもそもの話をここ…

(第2章)不平等な世界:都市化、幸福、格差は拡大?

1.都市化の話 都市化でいうところの「urban」の定義は国によって異なるが、一般的に数千人の居住者が比較的密集する場所を都市部と呼ぶ。ある国では2000人で都市と呼ぶこともあれば、別の国では5000人でそうなることもある。「都市密集地帯(urban agglomera…

どんなに環境に意識高くても、飛行機乗ったらチャラ

海外出張のため飛行機に乗ることが多い私は、環境負荷の高い仕事をしてることになる。今の職場では無理だが、かつては毎月海外へ飛んだり、スーツケースを2つ用意して自宅に到着したら準備していた2つ目のスーツケースと持って帰ってきたばかりのものと入れ…

UENSCO(1996)が示した21世紀の学習から

UNESCO (1996). "Learning: the treasure within" (PDFはこちら、通称「ドロール報告書」)では、「学習の4本柱」が示され、今でも重要なメッセージを伝えています。「21世紀教育国際委員会」と銘打たれたチームが出した報告書ですから、当然かもしれません…

待つこと

今のところ、私の教員としての最大の欠点は、待つのが苦手なこと。これは、実は致命的にマズイ時もある。 SNSの書き込みでも多忙な自分を描いており、それは事実ではあるが、ペースの違う人、特に学生にとっては「いつも忙しそうな先生」という印象を与え、…

気候変動と市民参画:今すぐか、その気になってからか

16歳のグレタ・トゥーンベリさん(スウェーデン人)は、環境保護活動家。 私はポーランドでCOP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)が開催される直前に、彼女のことを知りました。学部時代、地球の有効放射量を卒論で書いて理科教師をしていた私としては…

人類共通の課題「Winter」に向けて立ち上がる: GOT最終章が始まりましたね

2018年度のUNESCOキャンプでは、ニュージーランドから基調講演のために来ていた学校カリキュラムの専門家と「持続(不)可能な状況を前に、多くの人が目の前のことで精一杯で、まるでGOTだ。誰も『冬』に備えることができてない。人類が滅亡するかもしれない…