システム思考から考える教育と解決−2
循環的因果関係
先週は因果関係を探りました。正解や不正解という捉え方ではなく、自分はどう思うのか?という点が重要だということも共有しました。今の段階でグループで因果関係の図が共有されている状態のはずです。
宿題では、フィードバック構造について(ループ、自己強化、バランス)を確認しておいてもらいました。補助教材として、次の書籍も必要に応じてで。
- 自己強化:出生数の増加(+)が人口増加(+)につながり、増加した人口(+)に出生率をかけると当然ながら出生数も増える(+)というループ。日本のように、出生数が少なくなる(同)と、人口減少(同)に。ビデオでは、資本から投資、練習から成績も。(+)という表現が数の増減や価値の上下を引き起こしがちなので、要注意。
- バランス:人口増加は、死亡者数も増える(+)ことを意味する。死亡者数が増えると、人口は減少する(ー)。資本が多いと設備投資ができる(+)が減耗も増え、資本が減る(ー)。
- 「遅れ」:時差がここで重要になる。出生数が大きくなるとすぐに人口増加になるが、死亡者数が増えるまでには50年ぐらいの時差が出る。設備が古くなる・壊れるまで時間が生じる。これが直線的な因果関係だけでの分析では扱えない部分となり、システム・モデルの強みでもある。
システム思考による問題解決への手順
湊(2016:73-94)の入門書では、システム思考を用いた問題解決へのステップが記されている。本講義では次の5つ(リバレッジは加筆)を行いますが、今日は1〜3です。
- 時間軸分析:問題を把握することを目的に、その問題現象はどれぐらいの時間軸が必要かを考える。縦軸に問題、横軸に時間を設定。先週までで、SD定義と扱うトピックが各グループで決まっていますから、そのトピック(問題)の時間軸を、先週の原因・要素を参照しながら描きます。注意すべきは、誰の視点で何を見ているかを意識すること。記録係1の出番
- ステークホルダー分析:関係者・当事者を描く。同じシステムに関係していても目的・役割の異なる人達が存在する。賛成・反対の立場や、加害者・被害者という人もいる。彼らの利害が一致しない場合、問題解決には時間がかかる。彼らの関心を明らかにする。多くの当事者を描くには、ブレインストーミングが良い。その後に分類ができたら、各関係者の以下の3点を記録する。記録係2の出番(係1も手伝う)
a) 目的・役割(システムで関係者・団体の目的・役割は何か?)
b) 利(システムから何を得ようとしているか?)
c) 害(システムから嫌がることは何か?) - 変数抽出:上記の「利害」について、具体的な変数(要素)を挙げる。その利害の原因やリターンなど具体的なもので、ワークの中で確かめていきましょう。記録係3の出番(係1と2も手伝う)
- 因果関係の分析:ループづくり(来週)
- 仮説構築と「リバレッジ」判定:発表に向けた準備(来週以降)
日本語版がありました(お詫び)
ところで、指定している教科書の日本語版がちょうど1年前に出版されていました。私自身が日本語で勉強してなかったゆえに把握しておらず、申し訳ない!しかも、日本語の方が安いです!
社会変革のためのシステム思考実践ガイド――共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する
- 作者: デイヴィッドピーターストロー,井上英之,小田理一郎,中小路佳代子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/11/16
- メディア: 単行本