丸山の講義補助

Contents for Higher Education for Sustainable Development

システム思考から考える教育と解決−1

循環的因果関係に向けて

「持続可能な開発」 や「持続可能性」には、循環的な捉え方がとても重要です。今回はその前に、システム思考について再確認です。次回で循環的因果関係を扱います。教材4のイントロ章では「良心だけではダメ」とされ、第4章ではシステム思考のことが書かれていますので、参考にしてほしいと思います。

前々回は、2つの考え方の違いを第1章から確認しました。パターン化・マニュアル化した対応では通用しない、元から通用してなかったのにしたかのように信じてきたのかもしれません。念のため、書き出しておきます(下線は丸山による)

  • Conventional Thinking: The connection between problems and their causes is obvious and easy to trace; Others are to blame for our problems and must be the ones to change; A policy designed to achieve short-term success will also assure long-term success; In order to optimize the whole, we must optimize the parts; and Aggressively tackle many independent initiatives simultaneously.
  • Systems Thinking: The relationship is indirect & not obvious; We unwittingly create our own prob & have significant control or influence in solving them through changing our behavior; Most quick fixes have unintended consequences - They make no difference / make matter worse in the long run; In order to optimize the whole, we must improve relationships among the parts; and Only a few key coordinated changes sustained over time will produce large systems change.
Systems Thinking for Social Change: A Practical Guide to Solving Complex Problems, Avoiding Unintended Consequences, and Achieving Lasting Results

Systems Thinking for Social Change: A Practical Guide to Solving Complex Problems, Avoiding Unintended Consequences, and Achieving Lasting Results

  • 作者: David Peter Stroh
  • 出版社/メーカー: Chelsea Green Pub Co
  • 発売日: 2015/10/16
  • メディア: ペーパーバック
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でも、大きなシステムを変えることなんて、できるのでしょうか?顕在化した問題に圧倒されて(例:気候変動)、私たちは無力感を抱きがちです。華やかに成功した「ただの人」がオンラインで注目されると、自分は失敗だらけと感じる人がいるかもしれません。報道される問題の深刻度から、その関係者を責め立てて留飲を下げることもあるでしょう。でも、自分がその状況・立場・遭遇だったら、同じかもしれません。ここで、システム思考を用いる理由を共有します。

人の落ち度を過度に責めない

問題解決のため原因を追求すると、その人が悪いと思えることが多々あります。でも、湊(2016)の入門書では、システム思考では、現実に見られる結果はシステムの振る舞いによって発生し、それは構造によって生じると示されています。センゲ(2006 =2011)『学習する組織』でも、同じシステムの下では別の人であっても同じような結果を生み出すため、全体パターンを明らかにして、それを効果的に変える方法を見つける概念的枠組みとしてシステム思考を示します。例えば、平社員(議員)だった時は革新的なことを言っていたのに、偉くなる(大臣になる)と昔には自分が否定していたことを肯定するようになったり、まるで長いものに巻かれたかのようになることがあります。これは、本人のせい(もあるでしょうが)よりも、システム・構造が理由でありうるという指摘です。人々の間における能力の差はそれほど大きなものではないという経験則が正しいとすると、昔はうまく行ってたのに今ダメなのは、システムの問題と言えるのでは?

実践システム・シンキング 論理思考を超える問題解決のスキル (KS理工学専門書)

実践システム・シンキング 論理思考を超える問題解決のスキル (KS理工学専門書)

  • 作者: 湊宣明
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 単行本
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ロジカルなモデル・ピラミッド型の構造

ロジカル分析ではいくつかの原因を追求できますが、原因(要素)間の関係を扱うことが難しくなってしまう。「縦型」の組織運営はその典型で機能不全の理由を見えなくさせることも。ネットワーク研究でも、実際には水面下の関係性が組織の意思決定に重要であることが指摘されている。

今回は、まず直線的な因果関係を探りましょう。冷静・冷酷に分析してみます。何を、どう変えたいのかを書き出してみます。可能であれば、変化させたい対象、時系列・時間、変化のベクトルを。

大切な3ポイント:時間軸(時差)、関係性、フィードバックを意識する

教育は100年と言われ、持続可能な開発の議論は19世紀末に最大持続可能収穫量のもとの「回復時間」も想定されていたからこそ。次に、見えない関係性(構造)を見抜くこと。そして相互作用を判別していく。ピタゴラスイッチが好きな人には、とても面白いかもしれません。これらを次回やります。