丸山の講義補助

Contents for Higher Education for Sustainable Development

システム思考から考える教育と解決−3

グループ発表に向けて

まずグループ発表に必要なポイントを確認しておきましょう。

  • 「SD」の定義はできてますか?
  • トピックは、その定義にふさわしいものですか?また、自分たちがやりたいこと・解決したいことに直結してますか?(でないと、レポートも苦痛になる)
  • トピックの直線的な因果関係は把握した状態ですか?
  • 最終的に、ノンフォーマル教育プロジェクトとして立案できそうですか?

トピックを確認するために、こちらのビデオ(ごく一部)を観てみます。

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(字幕版)

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  • 発売日: 2016/09/28
  • メディア: Prime Video
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システム思考による問題解決への手順(続き)

先週に続き、今週もステップを進めましょう。湊(2016:73-94)問題解決へ向けての5ステップの後半を。

  1. 時間軸分析:縦軸に問題、横軸に時間を設定。
  2. ステークホルダー分析:関係者・当事者を描く。彼らの、
    a) 目的・役割(システムで関係者・団体の目的・役割は何か?)
    b) 利(システムから何を得ようとしているか?)
    c) 害(システムから嫌がることは何か?)
  3. 変数抽出:上記の「利害」について、具体的な変数(要素)を挙げる。その利害の原因やリターンなど具体的なもの
  4. 因果関係の分析:因果関係のループ図をつくります。変数抽出で得られた要素の関係を表現します。自己強化(出生数増加(+)が人口増加(+)へ)か、バランス(死亡者数が増加は人口は減少(ー)へ)か。そして時差となる「遅れ」が存在するか。紙ならそのまま書けば良いですが、タブレットスマホを使う場合、こんなアプリ(Post-It)を使うのも良いでしょう。
  5. 仮説構築と「リバレッジ(ツボ)」判定枝廣・小田の本を参考にすると、目前の問題の解決策という答えを探す前に、一度「その問題は解決に値するのか?」や「本当に守るべきものは何か?」をグループで自問してみます。連鎖するループで全体構造(あくまでもモデル内)を把握し、小さな力で大きく動かせる「てこleverageポイント」を見つけます。これは常識や直感に反することもあるので、センスが必要かもしれません。「てこポイント」の例は、
  • 変数(パラメータ)。例:数値を変更する
  • 物理的フロー・ストック構造。例:設計を改善する
  • 情報フローの構造。例:見える化による影響
  • 規則・動機づけ。例:行動を促す
  • 目的の自問。例:何のため?を繰り返す
  • パラダイム見直し。例:社会通念や常識の問い直し

システムを変えるとき、次の方法があります:望ましいループを作り出す、望ましいループを強化する、悪いループを断つ、悪いループを弱める、構造はそのまま悪循環を好循環に反転する(ibid. Loc:1699-1828)。詳細は、講義で。

現実課題を扱う人の方がすぐに?

前回から今回の間に、私はJICA研修生として途上国8カ国から11名のノンフォーマル教育の専門家を相手に、レクチャーを織り交ぜながらシステム・モデルの解決策をワークショップ形式で行いました。全員初めての経験でしたが、とてもスムーズ。壁一面に広がった要素と要素を関連させる作業は、現実のNFE課題に対峙している専門家たちにかかると、あっという間に整理されました。

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JICA NFE WS 20191121

循環モデルもすぐに理解され、「レバレッジ」ポイントも。なぜなら、NFEに関わる人達は、投入できる資源があまりにも限られているため、ツボとなる「レバレッジ」ポイントとなりうる場所へ優先的に投入する視点が鋭いためです。

上記の研修は日本国内で展開されていますが、海外の現場でなされるJICAさんのノンフォーマル教育(オルタナティブ教育)プロジェクトは、数少ないのものの、素晴らしいものがいくつかあります。例えば、こちら

www.jica.go.jp

(宣伝)この年末年始には、こちらの日本語の本を発展させたものが、ようやく英語で出版できそうです。 

ノンフォーマル教育の可能性: リアルな生活に根ざす教育へ

ノンフォーマル教育の可能性: リアルな生活に根ざす教育へ

  • 作者: 丸山英樹,太田美幸
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2013/12/16
  • メディア: 単行本
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