丸山の講義補助

Contents for Higher Education for Sustainable Development

(第2章)不平等な世界:都市化、幸福、格差は拡大?

1.都市化の話

都市化でいうところの「urban」の定義は国によって異なるが、一般的に数千人の居住者が比較的密集する場所を都市部と呼ぶ。ある国では2000人で都市と呼ぶこともあれば、別の国では5000人でそうなることもある。「都市密集地帯(urban agglomeration)」は、100万人単位で密集する形で居住者が集まる場所を指す(p.51)。いずれも、国内格差として捉えることができる。

世界中で都市化が進んでいることも現在の特徴に挙げられる。下記で紹介したビデオでも、アフリカの話として都市部への移住を希望する村人の話が出ていた。

sophiamaru.hatenablog.com

20年以上前に私がアフリカで教師をやっていた時でも、学校教師が小遣い稼ぎのため、授業の補講を学校の授業とは別に放課後に有料で指導していた。先日、川口純先生は次の本を紹介しながら、同じことを説明してくれ、さらには給与水準の高い他国へ教師が流出する様子も話してくれた。

教員政策と国際協力――未来を拓く教育をすべての子どもに

教員政策と国際協力――未来を拓く教育をすべての子どもに

 

2. 格差の話

Gini coefficient(ジニ係数)は、その社会の不平等な度合いを0から1の間で係数として示す。単純比較はあまり意味はないが、国際比較をすると、日本もけっこうな格差社会であることがわかる。

www.oecd.org

もともと大きな歪みを抱えて世界は動いてきました。Worldmapperで確認してみましょう。教育にかける予算は各国でここまで異なります。人口減少の地図は次URL

worldmapper.org

私も毎日コーヒー飲んでますが、その産出量は次URL

worldmapper.org

日本が世界一と報告されるのは、捕鯨の数(下記URL)。環境が絡む国際会議だと、他国からは日本人参加者と否応なく見られ、時に言いがかりつけられることも。

worldmapper.org

3. ウェルビーイングの話

ウェルビーイング測定には国際機関も研究者も尽力している。UNDPは人間開発指標(Human Development Index)を1990年に開発し、今も毎年報告書を出している。UNDPのいう「人間開発」は、私たちの選択肢を拡大することを指し、すぐにリターンがあるものでなくても、知識へのアクセス、良い栄養状態・医療サービス、安定した生計、安全確保や十分な余暇、政治的・文化的自由および地域社会への参加などに価値をおいている。2018年度まで私も全学共通科目「人間・環境開発論」で、人間開発と環境開発の両輪として示してきました。

2019年の「人間開発報告書」テーマは不平等のようで、データを使ってビジュアル化するコンテストも開催されています(〆切:5/27、下記参照)

hdr.undp.org

教科書(p.64)は、人々の「人生の満足度」は、まず収入(一人あたりGDP)に影響され、次に社会関係資本(社会的環境とコミュニティの質)に依拠すると述べます。「福祉」と翻訳されることもあるウェルビーイング、特に社会関係資本について私はずっと追いかけていて、2018年度はFGS生とともに現地調査を行いました。その結果は上智大学グローバル・コンサーン研究所の紀要に掲載してもらい、その中の先行研究レビューで「認知的学力は、ウェルビーイングにあまり関係ない」と記しました。これは、学校のテストなどの点数で示される「能力」は、その人のウェルビーイングにあまり関係しないこと、要するに「テストの点が高くても、その人が幸せとは言えない」ことにもなります。当たり前と思う人もいるでしょうが、改めてそれが確認されると、孤独にお勉強をしていた私みたいな人間はツライです(笑)。

4. 収斂するのか、拡散するのか

教科書では簡単に、国の間における貧富の格差が縮小していくか、拡大していくかという点が記されています。最貧困に分類された国々が中進国程度になるための移行に向かうプロセスを把握することが重要と述べます。中国も例となりうるとしますが、さて、それほど一般化できる話なのか、それは講義の中での議論としましょう。

5. では、教育は?

これらのことを踏まえて、講義では教育の役割などを議論します。